建築は破壊と生産(スクラップ・アンド・ビルド)という二つの面をもっている。この性格がもっともわかりやすく表れているのが駅前の都市再開発であろう。経済発展により人口や建物が増えていくと、従来の道路や区画では対応できなくなる。木造住宅が密集しているにもかかわらず道幅が狭いため消防車が入れないなど、防災の面でもはなはだ危険である。そこで、経済活動の効率化や安全性を考慮して、人が通行する歩道と自動車の通行する道路を立体的に分離させる人工地盤やデッキをつくり、安全性をはかるとともに、バス停やタクシー乗場、駅前のデパートへも行きやすく整備されてきた。ところが、駅前再開発は、安全性、利便性、経済性という面では合格だが、人と人とが出会い触れ合う場としての側面をうばってしまった。帰り道は、狭い路地裏の赤ちょうちんで人と語らうのも楽しみのひとつ。「高い所を歩かせてバスにそのまま乗り込むなんてね」とぼやく人もいるだろう。たしかに、肩が触れ合う駅前の路地裏は、いろいろな人の姿が混ざり合った場所であり、独特の味わいがあるものだ。しかし、再開発により個性ある駅前は次々に消え去り、全国どこでも同じような景色となってしまった。それでは、独特な味わいを残した再開発とはどんなものなのか、考えてみよう。
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