建て替えに賛成か、反対か、採決が行われた。賛成一四〇票、反対二六票、残りは白票。全区分所有者の五分の四である「一四三票」に三票足りず、建て替え決議は否決された。しかし多数派は「反対票も五分の一には及んでいない、大部分の住人は建て替えを望んでいる」と九七年一月、再度住民総会に決議案を諮った。その紡果、賛成票が五分の四を超えた。「建て替え決議」は成立した。建て替え費用は一戸一八〇〇万円と見積もられた。決議の一週間後、反対者に建て替えに参加するよう「催告書」が届いた。
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建て替えに参加しなければ「時価」で家を売って退去しなければならない。平均的な七三平米の住戸で、初期分譲価格は約一八〇〇万円たった。少数の補修派は「復興住民会議」を結成した。若原キヌコが集まった人たちに訴えた。「集会で意見を言おうとしても無視されたこともあります。逆に大勢の建て替え派に囲まれて、意見を述べるのは、わたしばかり。無言の圧力があれほど怖いとは思いませんでした。脚が震えました。これでいいんでしょうか。いい加減な情報で流れができたら止められない。『建て替えどころか、補修の費用もない、どうしたらいいですか』って言った方もいました。理事会は、建て替えに参加できない人のことを考えず、数合わせばっかり。それを行政がバックアップしている。納得できますか」「年寄りと貧乏人は死ねってことやわ」と一人暮らしのおばあさんが呟いた。